UBE/UBE株式会社

REPORT vol.8
リサイクルコンポジット/
リサイクル材の新たな可能性

捨てられるはずだった漁網が、未来を動かす。
UBE㈱
リサイクルコンポジット営業担当

※肩書・担当は掲載当時のものです

01

製品が市場に出るまでの
私たちのチャレンジ

「環境にいい」だけでは
採用されない

「環境にいい材料だから使いたい」。そう考える企業は増えています。しかし実際の製品開発では、それだけで採用が決まることはありません。性能や品質、安定供給など、クリアすべきハードルが数多く存在するからです。
今回のリサイクル材プロジェクトも、そうした課題に向き合うことから始まりました。
海洋プラスチックごみによる海洋汚染は、生命の源である「海」そのものを脅かす深刻な環境問題となっています。この問題を先進的な技術で解決しようとするメーカーとの出合いをきっかけに、リサイクル材プロジェクトの流れが変わりました。
まず、UBEが着目したのが、使用済み漁網の活用です。一部の漁網は「6ナイロン」という単一素材で組成されています。従来、UBEは「6ナイロン」を製造し、漁網メーカーへ供給してきた背景があり、役目を終えた漁網を海洋環境問題の解決につながる製品へと再利用することは自然な展開でした。
しかし、顧客にとってリサイクル材を自社製品向けの材料として承認することは簡単な決断ではありませんでした。
「本当にこれまで使っていた材料と同等の性能はあるのか」「品質にバラツキはないのか」
こうした不安に対し、UBEは単なる材料提案だけではなく、樹脂データの提供、ナイロン製造メーカーとしての経験による技術的サポートまで含めた伴走型の提案を行いました。
60年以上にわたり培ってきたナイロン事業の実績と信頼からくる製品の完成度が評価され、ついに材料の顧客承認が実現したのです。

漁網は「海のごみ」か、 「未来の資源」か

海洋ごみ問題の象徴の一つが廃漁網です。海に流出した漁網は長期間分解されず、海洋生物への被害やマイクロプラスチック発生の原因となることが指摘されています。
一方で、漁網の多くは高品質なナイロンでできており、適切に回収・再資源化することで、新たな製品の原料として活用できる可能性を秘めています。
UBEでは、信頼するパートナー企業によって回収・洗浄・破砕・ペレット化された使用済み漁網を活用し、資源循環の仕組みづくりに取り組んでいます。そして、その資源を実際の製品に使えるリサイクルコンポジット(複合材料)へと仕上げられる技術こそ、今回の提案の核になりました。
「海のごみ」として捉えられてきた漁網を「海を守るための未来の資源」として活かす。
この発想は、限りある資源を循環させながら価値を生み出すサーキュラーエコノミー(循環型経済)の考え方そのものです。今回の取り組みは、海洋環境保全と資源循環の両立を目指す挑戦でもあります。
02

テクニカル・ハードルへの
私たちのチャレンジ

顧客の信頼を勝ち得たのは 「つくり込む技術」だった

リサイクル材の課題は、品質にバラツキが出ることです。使用環境や回収ルートによって状態は異なり、そのままでは工業製品として安定して使用することはできません。
そこで重要になるのが、「コンパウンド技術」です。
コンパウンド技術とは、製品に必要な材料を組み合わせて性能を調整し、強度や耐久性、成形性などを製品に求められる性能にチューニングする技術を指します。
UBEは長年にわたりナイロン事業を通じて素材への深い知見を培い、その特性を引き出すコンパウンド技術を磨いてきました。こうした技術の蓄積が、使用済み漁網を新たな価値を持つ材料へと生まれ変わらせています。
その成果の一つが「リサイクルコンポジット」です。
今回のプロジェクトでは、漁網由来のペレットの品質分析を行い、ガラスファイバーや耐熱添加剤などを配合しながら性能と品質を最適化。リサイクルコンポジットとして価値を高めることで、バージン材からの切り替えも可能になる高機能製品をつくりあげることに成功しました。
目指したのは「リサイクル材だから仕方ない」ではなく、「リサイクル材でも安心して使える品質」です。この難題への挑戦が、顧客の信頼を勝ち得たのです。

UBE独自の環境製品ブランドで、 2030年GHG排出量
50%削減を目指す

UBEグループでは、環境貢献に資する製品・技術を「U-BE-INFINITY®」として認定しています。
GHG(温室効果ガス)排出量の削減や、リサイクル材・バイオマスの活用など、一定の基準を満たした製品だけを認定する仕組みで、その評価には第三者機関による審査も取り入れています。企業の独自基準にとどまらず、客観性や透明性を重視している点が特徴です。
今回の漁網由来のリサイクル材もその一つです。自動車部品、オフィスチェア、生活用品など幅広い用途への展開が期待されています。ほかにも、航空機部品に使われた炭素繊維をリサイクルし、自転車のサドルなどへ再利用する取り組みも進んでいます。
一方で、リサイクル資材にも限りがあることから、非食用トウモロコシやヒマシ油など再生可能資源を原料とするバイオナイロンを活用したコンポジット製品の開発も加速させています。
こうした環境貢献型製品・技術を積み重ねることで、UBEグループは2030年度までにGHG排出量50%削減という目標の実現を目指しています。
03

リサイクル材が
拓く未来への
私たちのチャレンジ

小さな成功事例が、 社会を変えるきっかけになる

小さな成功事例が、 社会を変えるきっかけになる

「漁網由来のリサイクル材が、1件の顧客の承認を得た」という事実だけを見ると、一つの製品開発の小さな成功事例に見えるかもしれません。
しかし、この取り組みの本当の価値はその先にあります。
現在、欧州では自動車へのリサイクル材使用義務化が進められています。環境規制は今後さらに強化される見通しであり、企業にはより高度な資源循環への対応が求められます。
そのとき重要になるのは、「実際に使える成功事例」が存在することです。その実績が次の実績を生み、新たな市場をつくるのです。
今回のプロジェクトで得られた最大の成果は、「リサイクル材でもここまでできる」という実績が、顧客や社内に根強く残っていた固定観念を少しずつ変え始めたことです。一つの部品から始まった挑戦は、やがて新たな実績や市場拡大につながっていく可能性を秘めています。

2050年
カーボンニュートラルを
目指して

かつてリサイクル材には「品質が劣る」「用途が限られる」というイメージがありました。しかし、近年は技術の進歩によって、今まで使えなかった部品への活用も広がりつつあります。
リサイクル材の活用が広がれば、新たな石油由来原料の使用を抑えられるだけでなく、原料の製造や廃棄に伴うCO2排出量の削減にもつながります。さらに、漁網のような使用済み製品を資源として循環させることで、海洋ごみの削減や資源枯渇への対応など、複数の社会課題を同時に解決できる可能性があります。
2050年カーボンニュートラルの実現には、一つの技術や一つの製品だけで達成できる特効薬はありません。だからこそ、こうした挑戦を積み重ね、資源を「使い捨てる」から「活かし続ける」社会へと転換していくことが重要です。
今回の挑戦は、その未来へ向けた、たしかな一歩といえるでしょう。

次回は「高純度硝酸」の
パーパス体現に迫ります

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