UBE/UBE株式会社

REPORT vol.1
水性ポリイミドワニス開発物語

化学業界の"不可能"に水で挑む。
01

製品が市場に出るまでの
私たちのチャレンジ

常識を覆す挑戦の始まり
「プラスチックの王様」を水で溶かす無謀なプロジェクト

非常に優れた耐熱性、機械的強度、電気絶縁性、耐薬品性を兼ね備え、「プラスチックの王様」とも呼ばれるポリイミド樹脂。その製品の一つである「ポリイミドワニス(塗料)」は、みなさんの身の回りにあるスマートフォンのディスプレイやコピー機のトナー定着用ベルトや転写ベルトなどに使用され、UBEのポリイミドワニスは世界トップクラスのシェアを誇っています。
しかし、従来はNMPなどの有機溶剤で溶かしてつくるのが業界の常識でした。それらの溶剤は作業者の健康管理や環境への配慮の観点から、慎重に扱う必要がありました。さらに製造過程では高温条件になることも多く、安全対策を施した設備や管理体制が欠かせなかったのです。結果として、環境対応や設備投資を含めた負担を抱えることが、業界の標準的な姿でした。
そんな中、2010年頃、一つの声が上がります。

「これを、水でできないか?」

ただし、ポリイミドの前段階であるポリアミック酸は水に溶けません。それどころか、水に触れると分解してしまうという致命的な弱点を持っていたのです。業界の常識から見れば無謀。でも、水でつくることができれば、環境負荷も健康リスクも、設備コストも大幅に下げられます。
社会の未来を見据えた、誰も成功例を持たない挑戦が、静かに始まりました。

敵の中に飛び込む孤独なヒーロー 開発チームの水との闘い

ポリイミドの前段階であるポリアミック酸は、実は水に弱く、水は溶媒であると同時に分子構造を壊してしまう敵でもありました。
つまり、開発陣は、「敵だらけの環境に放り込んでも、壊れずに生き残る材料をつくる」という難題に挑んだのです。
ポリアミック酸の分子構造を根本から見直し、精緻にコントロールする工夫を重ねることで保存中の変質を抑え、水の中でも安定して存在できる技術的なブレイクスルーを確立しました。それは孤独なヒーローを鍛え上げる作業でもあったのです。
こうして完成した「水性ポリイミドワニス」を展示会に出すと、この材料の難しさを知っている人ほど「どうやって溶かしているのか?」
と、驚きの声を上げました。それもそのはず、これは単なる改良ではなく、常識をひっくり返す材料だったからです。
02

テクニカル・ハードルへの
私たちのチャレンジ

フライパンの上でも本気を出さない 常識外れの性能

苦難の末に生まれた水性ポリイミドワニスですが、水性化という大きな制約を乗り越えながらも、プラスチックの王様としての圧倒的なスペックを一切妥協しませんでした。
強火で熱するフライパンの上に置いても「まだ本気を出していない」と言えるほどの超高耐熱性(300度超)を保持し、1ミリほどの薄い膜で理論上数万ボルトの電圧を跳ね返す強力な絶縁性も実現しています。有害な溶剤をまったく使わずに、従来のポリイミドワニスと同等の性能を発揮するのです。
さらに従来品はなかなか乾かない(沸点が高い)のが弱点でしたが、水ならではの特性を活かし、初期段階の乾燥温度を従来の100度から40度へと大幅に引き下げることで、製造時のエネルギー消費を抑えることにも成功しました。
このエネルギーコスト削減に加え、有機溶剤をゼロにすることによって、大気を汚染する揮発性有機化合物(VOC)を80%削減、高額な設備不要など、工場の風景そのものを変えられる可能性を秘めています。

業界の常識を塗り替え 「不可能」を形にしたという
事実

量産化や保存安定性、新規採用の拡大といった課題もあります。
しかし、一つたしかなのは、「不可能」と言われたことを形にした事実です。
ポリイミド=有機溶剤が常識だった業界に、「水」という選択肢を示したこと。それは作業者の安全向上だけでなく、環境負荷低減、設備投資削減、エネルギー削減という社会全体への波及効果を持つものです。
03

水性ポリイミドが
拓く未来への
私たちのチャレンジ

限られた環境から幅広い現場へ 水が切り開く新しい市場

社会は今、電動化と高度電子化の時代へ進んでいます。EV(電気自動車)に使用されるリチウムイオン電池やデジタルの主役となったAIサーバーは高エネルギー化し、半導体は高密度化しています。
そこで重要になるのが"熱マネジメント"と"絶縁性能"。「今よりもっと熱や電圧に耐えられる、タフな材料」が必要とされているのです。
水性ポリイミドワニスは、そのセンターに立てる材料です。

これまで専用設備がないと扱えなかったポリイミドが、より身近な材料として使えるようになるのです。つまり、従来、参入できなかった分野にも、環境負荷の低さと高性能を武器に扉が開き始めています。水であることが、逆に新しい用途を呼び込むのです。
時代の要請により、ポリイミドワニス市場はこれから急激に成長するでしょう。このとき、「水性ポリイミドワニスといえばUBEだ」と、世界中のメーカーが当たり前のように使う"世界標準の材料"になることを私たちは目指しています。

15年越しの革命 水性ポリイミドが変える
世界の常識

近年は、特にヨーロッパを中心に「有害な有機溶剤を禁止しよう」という規制強化の動きも始まっています。その流れを受け、世界中の企業が「有機溶剤を使わない、クリーンなポリイミドワニス」を探しているのです。
今こそ、私たちがそれぞれの分野の企業を"ドアノック"し、パートナーとして名乗り出るときです。そして、その価値と無限の可能性を伝えることで、水性ポリイミドワニスは単なる新材料ではなく、業界の常識を塗り替えるゲームチェンジャーになるかもしれません。
難題を打破し、水性ポリイミドワニスで世界を変える。
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